丹波杜氏インタビュー 狩場酒造場 藤井隆男

杜氏になる

 

先輩杜氏は、基本的なところはお話してくれるのですが、肝心な技術的なところは、杜氏は酒造りの職人ですので、あまり語らず、自身で目で見て、盗んで習得しました。
新しく杜氏になるというものは、先輩杜氏から推薦を受けて、違う酒屋へ赴任します。 先輩杜氏から離れるのは心細く、自分が試されます。最初の新任杜氏のときは、身も心も大変でした。

杜氏にはたくさんの責任があります。まず第一に、蔵人皆さんに安全に仕事をしてもらうこと。そして、私の働く狩場酒造は、地酒屋です。大手は組織を通じて販売をしますので、販売の仕方の違いがあります。そのため、地元のお客様に喜んでいただけるお酒造りを第一に考えないといけません。なかなか、お客様に喜んでもらうということは幅広く難しいのですが、大手と違った感覚で酒を造らないといけません。

店の方とも、蔵人とも家族のような感覚ですので、親密に連携し、お店の方針、お客様の嗜好も皆で考えながら造っていくのが杜氏として大切なことだと思います。

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麹へのこだわり

 

「一麹、二酛、三造り」と先輩杜氏から教わりました。杜氏としては、一番大切にしないといけない言葉です。
お酒というのは、麹が大切なんですね。蒸米に麹菌がはたらいて、蒸米を糖化して、糖化した糖分を栄養にして酵母がアルコール発酵する、という日本酒独特の「並行発酵」というものがあります。それを順調に行うには、第一に麹がしっかりできていないと良い酒が作りにくいのです。
また、灘では、宮水という良い水がありますが、地酒屋では、それぞれの井戸になるので、お酒もおとなしいお酒になりまやすいので、お客様がどう反応するか気遣ったことがありますね。

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酒造りを担う若い世代に対して

 

以前と違い、今は、若い後継者が大変少なくなっています。国酒という伝統ある酒造りに関心を持っていただいて、自分も造ってみようとチャレンジしていただきたいです。私達が現役の間に技術などを受け継いで、丹波杜氏の伝統をずっとこれからも受け継いでもらえれば大変有難く思います。

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